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こんや異装のげん月の下

 ここに一冊の本があります。詩集です。以前に書いた「注釈がやたらに多い」本です。詩だから読み方や受け取り方は様々でいいはずですが、作者ではなく編者は「難解な言葉には注釈をつけた方が親切だ」と思ったみたいです。白い紙に印刷された活字の横にたくさんの「*」印をつけることになんの躊躇もなかった、というより「つけなくてはいけないもの」だったのでしょう。今回のタイトルのわずか一行にもう「異装」と「げん月」のふたつに「*」(注釈)がついています。

 今のように誰もが「世界最大級の辞書と百科事典」を手軽に持ち歩く時代が来る前の名残りだとすれば仕方がないかもしれません。しかし・・・。

 「澱む」「フロックコート」「真鍮」「アセチレン」「郵便脚夫」「エレキ」「敬虔」これらに注釈が要りますかね?わざわざ言葉の横に「*」をつけて。

 百歩譲って「聖玻璃」「舷燈」「砒素鏡」「月長石」「天狗巣病」「海綿白金」「無上道」に注釈を付けた気持ちはわかります。

 でも要らない。全部知っているから?もちろん違います。全部知らない。調べなければ本当の意味はわからない。わからないからです。言葉として読み、必要なら後で調べたい。そしてまた、その大好きな詩を、何十回何百回繰り返し読みたい。意味を知らずに、知った後で、辛く悲しい気持ちの夜、幸せな気持ちの朝に。

 「*」は、その詩が書かれた時、ついていなかったと思うから。

by livehouse-uhu | 2017-07-11 10:28 | Comments(0)  

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