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仏法僧の鳴く森の奥にⅡ

 声のブッポウソウと姿のブッポウソウについては、小さい頃によく親父から聞かされた。


 夜の森の中で「ブッ、ポウ、ソウ」(尊い三つの宝である仏、法、僧)と鳴く鳥が、長い間(姿の)ブッポウソウだと信じられていた(だからこそそう名付けられた)が、実はその声の持ち主はまったく別のフクロウの仲間であるコノハズクだった、というこの話はよほど親父の琴線に触れたらしく、何度も繰り返し聞いた記憶がある。

 二種類の鳥の鳴き声の取り違えがわかったのは1935年、オラが生まれるわずか二十数年前のことだ。親父は戦争に行く前、十代の少年。ブッポウソウの声を中継したラジオ放送がきっかけだったそうだ。

 長い間信じられて来たものが覆る瞬間。親父はその十年後に終戦によってもう一度それを体験するのだ。

 オラは勝手気ままを繰り返し、故郷を遠く離れてある日鳳来寺山に迷いこんだ。ここが、親父がよく言っていたブッポウソウの森かぁ。

 何度か夜を過ごしたが、ブッポウソウ(コノハズク)の声を聴くことはなかった。もう鳴かないらしい。

 何処に行ったかい、声のブッポウソウ。もっとずっと遠い山の奥かい。オラの店は、お前の仲間のワシミミズクという名前なんだぜ。

 声のブッポウソウ(コノハズク)の鳴き声。https://www.youtube.com/watch?v=F5qPulrTPnE


by livehouse-uhu | 2016-10-13 11:11 | Comments(0)  

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