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記憶の狭間

 「何故今こんなことを思い出すんだろう」という時がある。

 初めて買ってもらったギターはガット(クラシック)ギターだった。本当はフォークギターが欲しかったのだが、「ガットギターなら買ってやる」という父親の提案を飲んだのだ。

 「自己流ではなく教室に通う」というのも条件だった。真面目な人だったのである。13歳のオラは毎週日曜日の夕方、布とビニール製で赤黒チェック柄のギターケース、いやギター袋?を持ちデニムの鞄にカルカッシギター教則本を入れて、バスで三松堂楽器店の二階にあるギター教室に通った。

 そこには、色のついた砂をキャンパスに接着して描かれた風景画があって、先生が来るのを待っている間に指で触ったら、絵の中の松の木が崩れてしまった。オラはそのことを誰にも言わず知らん顔をしていたが、いつかバレるのでは、と教室のたびにビクビクしていた。

 「何故今まで思い出さなかったのだろう」ということがある。

 三松堂楽器店のギター教室では、毎年夏に先生や生徒、楽器店のお客さん達で、釜石の山奥にある牧場近くの廃校になった中学校の校舎を借りてキャンプをした。

 バーベキューをし、大人は酒を飲み、とにかく朝までギターを弾いた。オラが「廃校になった中学校に泊まって朝までギターを弾いた」のは山梨の早川町が「初めて」ではなかったのだ。

 子供にとって決して印象の薄い出来事ではなかったはずなのに、それを思い出したのは昨夜のことだ。

 高いビルの上から南アルプスを見た。オラはこの景色を何処かで見たことがあるはずなのだが、いったい何処だっただろうか。それとも、今この景色を見ている自分を、いつか遠い昔の自分だと勘違いしているのだろうか。

by livehouse-uhu | 2015-05-08 09:19 | Comments(2)  

Commented by 凸ヤマ at 2015-05-09 02:34 x
なかなか興味深いね。小生にも似た経験が在るもの。
なんで後々まで引き摺ってるその原体験を忘れてた
(つもりになってた)し!?ってコトが。
だが、それよりも、だ。
(;¬_¬)同じ教室に通った時期が在るのに、小生は
そのキャンプに誘われた記憶がまるで無い方が問題だw
超インドア小学生でキャンプ嫌いだったから、
ハナから断ってたのかしら('~`;) ?
Commented by しんや at 2015-05-09 15:03 x
 そこよ。「忘れてたな~」じゃなくて「なんで!?いろいろ影響しているはずなのに何故そこだけぽっかり抜け落ちてた?」ってヤツね。

 ふむ、三松堂楽器店の御大には凸について「打楽器の好きな子でねぇ」と聞いた記憶がある。一緒に通った時期はなく、凸が行ってたのはオレの前だろ?キャンプが始まったのがその後ではないのか。

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